■第49回(6月23日)

『プロの品格 −Nobles Oblige−』


 


   カリフォルニアのサンディエゴで行われた今年のUSオープンでは,5日目18ホールによるプレーオフでも決着がつかず,引き続くサドンデスの結果,タイガーウッズ選手が死闘を制してまたしてもメジャー大会の優勝を勝ち取りました。

   御存知のように今回のタイガーは,軸足の左膝を手術した後で,彼本人の談話では体調は万全,左足膝には全く問題はない,と話していました。しかし,彼のようなハードヒッターは常にフルスウィングで,全体重とスウィングによる遠心力が全て左膝にかかります。案の定,3日目後半以降の彼の左膝は強い痛みを発するようになり,凡人ならばとてもゴルフなどしていられないほどの状態であったと言われています。

   ところが,そうなってからの彼のプレイはまさに奇跡の連続。痛みをこらえてのフルスウィングのティーショットは,その度に大きくフェアウェイを外れて観客の中へ。そしてそのリカバリーショットは辛くもグリーンを捉え,そして奇跡のイーグルやバーディーを次々に奪ってゆく,まさに奇跡の追い上げで観客を魅了してゆきました。

   渾身のスウィングの後,タイガーは一瞬苦痛に顔をゆがめはしましたが,その後は気丈にも,何事もなかったかのようにフェアウェイを歩き出し,既に次のショットに向けて神経を集中させてゆきます。その相貌は見ていて恐ろしいほどの迫力があり,まるで怒っているようにも見えるほどでした。

   プロの選手にとって,膝が痛かったからスコアが出なかった,という言い訳は一切意味がありません。Nobles Oblige(ノブレスオブリージュ)と言う言葉があります。「位高ければ責任重し」とでも訳すのでしょう。まさにタイガーの姿を現しているように思います。世界のゴルフ界に君臨するという重責を担う者の,あるべき姿がそこにありました。どんな逆境に立たされても,どのような自己犠牲を強いられようとも,ひたすら自分自身に対面し,勝利するという責任を全うするためにのみ全神経を集中させてゆく姿に,企業経営者にも通ずる一面を垣間見ました。

   この試合後タイガーは再び膝の手術を余儀なくされ,今シーズンの残る2大メージャー大会への出場は不可能になりました。しかし,タイガー自身の試合後の満足感は,他人には知りえないほどのものではなかったかと想像します。「リスクを取った者」のみが味わうことが出来る,大きな喜びに包まれているはずです。リスクを取れる経営こそが,ベンチャー企業が味わえる勝利の美酒への道なのです。

 
 

 
 
 
 
 
 
 
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