社長コラム

社長コラム 2019

第83回(12月26日)『テロメライシンの開発情報のご報告』

平成から令和に変わった本年も,いよいよ残すところあと5日。皆様には多大なるご声援を頂き,誠にありがとうございました。
今年はオンコリス創業15周年を迎え,当社売上高が10億円以上を記録することが確実であり,おかげさまで創業以来最高の売り上げを達成する見込みです。とはいえ,これからも更に大きな努力が必要だと痛感しています。

さて,テロメライシンの開発状況について報告したいと思います。国内開発は既にライセンス先の中外製薬(株)に移管され,これまでに様々な治験開始に向けての準備が順調に整ってきているようです。いよいよ来年から,国内の主要治験である放射線併用による食道がんPhase2が,国内多施設において始まろうとしています。

国立がん研究センター東病院ではペムブロリズマブ併用の食道がんPhase 1b試験が進められています。症例の組み入れがやや遅れ気味ではありますが,確実に進んでおり,一方,アメリカではコーネル大学の胃がん・食道がんPhase 2も進行しています。 残念なのは,韓国・台湾での肝臓がんPhase 1が遅れていることで,あと1例の組み入れを残しています。何とか来年度に結果報告ができるよう頑張ります。

さらに,現在アメリカでは,放射線化学療法併用の食道がんPhase 1やペムブロリズマブ併用の頭頸部がんPhase 2の準備が進み,更に乳がん,肺がんに対するチェックポイント阻害剤併用試験の準備も進められています。来年の治験開始が待ち遠しいです。

中国では,Hengrui社が10月31日に中国政府に治験届の相談(Pre-IND)を行っており,その結果を待って来年にも治験が開始される見込みとなっているようです。

このように今年度は,かつてないほどにテロメライシンの開発が多方面にわたって進められるに至り,これらの治験結果が近い将来明らかになってくるのが楽しみになってきました。

また,第2世代ウイルスのOBP-702の開発も進んでおり,11月末に岡山で行われたバイオセラピー学会でも,数多くの演題が発表され,テロメライシンにはない強力かつ多様な抗がん作用が見えてきました。これも2年以内には臨床試験に進めるよう,社員一同頑張っています。

来る令和2年は,株主の皆様にとっても実り多い,輝かしい1年になりますよう,心よりお祈り申し上げます。

令和元年 12月

オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第82回(9月25日)『腫瘍溶解ウイルスの開発見通し』

株主の皆様へ

今年も地球温暖化のせいか,大きな台風がいくつも日本列島を直撃しました。未だに電気や交通が不自由な地域もあると報道されていますが,この度被害にあわれました方々,ならびにその関係者の皆様には,心よりお見舞い申し上げます。

さて,まずテロメライシンに関する直近の状況を報告させていただきます。今年4月にライセンスが決まりました中外製薬様との国内臨床試験と,先駆け申請に関する引継ぎは順調に推移しております。若干の寂しさもありますが,放射線併用のPhase2臨床試験の準備も順調に進んでおり,今後とどこおりなく臨床試験が開始され適切な症例が組み入れられるよう,弊社も全面的にバックアップしてゆきたいと思います。

今後弊社は,韓国・台湾で実施中の肝細胞がんPhase1を完了させるとともに,アメリカで実施中の胃がん・食道がんPhase2(コーネル大学,医師主導治験)をはじめとする日本以外で実施されるテロメライシンの臨床試験をオンコリス主導で進めてゆきます。

一方で,弊社はこれからオンコリスの腫瘍溶解ウイルスプラットフォームを形作ってゆくために,第2世代テロメライシン「OBP-702」の開発を本格化させています。このウイルスは,テロメライシンの遺伝子配列にp53という強力な「がん抑制遺伝子」を搭載することによって,テロメライシンに比べて10-30倍の強力ながん殺傷効果を示すウイルスであることが確認されています。

9月26日から開催される第78回日本癌学会では,テロメライシンだけではなく,OBP-702に関する発表が岡山大学から5演題発表される予定です。臨床試験の対象と考えられている膵臓がん,骨肉腫,あるいは小児の神経芽腫といった,従来の薬が効きにくいと言われているがん種で,OBP-702は非常に強い活性を示すとともに,PD-1抗体(チェックポイント阻害剤)との併用で,より強い効果を示すという実験結果が報告される予定です。今後2-3年後には臨床試験を開始できるよう頑張って開発してゆきたいと思います。

更に弊社では,直接リンパ球や樹状細胞に刺激を与える遺伝子を搭載した「第3世代のウイルス」=「スーパーテロメライシン」の設計を進めており,がん局所投与のみならず,点滴投与も可能になるようなウイルスの開発にも着手し,全身に転移したがんにも効果を示せるようにしてゆきたいと考えています。

今後とも,がんを切らずに治せる患者様を増やせるよう,皆様のご指導を頂きますよう,よろしくお願いいたします。

2019年9月25日

第81回(5月31日)『中外製薬とのライセンス契約と先駆け審査指定』

株主の皆様へ

今年の5月は気温が40℃にせまる異常な暑さが続き,トランプ大統領の来日や心痛む事件が相次ぐなど,記憶に刻まれる出来事が続く月となりました。

さて,去る4月8日に中外製薬株式会社とのライセンス契約を締結してから間もなく2か月になろうとしています。その間には両社の臨床部門,薬事部門あるいは製造部門などの会議が行われ,テロメライシンに関する技術や試験データなどの情報交換が活発に行われました。さすが大手製薬企業である中外製薬株式会社の開発体制は、予想していた以上に万全が期されており,これからの開発進展が楽しみになってきました。

また,4月8日同日に発表された「先駆け審査指定」につきましても,PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)のなかに当社担当のConcierge(コンシェルジェ)が任命されており,Phase2終了後の承認申請に向けて近いうちに話し合いが行われる予定になっています。これも,テロメライシンプロジェクトを活性化するうえで,非常に大きなモチベーションになっています。中外製薬株式会社と強固なスクラムを組んで,テロメライシンの承認申請に向けて全力で取り組んでゆきたいと思っています。

現在行われている放射線併用による食道がんPhase1試験は,あと1例の組み入れで完了予定となっており,岡山大学と国立がん研究センター東病院では精力的に組み入れ症例の検討を行っています。ペムブロリズマブ併用のPhase1b試験ではすでに6症例が組み入れられ,年内に合計10症例の組み入れを完了させる予定です。また,アメリカのコーネル大学での胃がん・胃食道接合部がんのPhase2試験は2例目の組み入れが開始され,順調なスタートになっています。

今週末からはシカゴで米国臨床腫瘍学会(ASCO)が開催され,上記のコーネル大学での臨床試験計画が発表され,またその後フィラデルフィアで行われるビジネスマッチングの場であるBIOでも,大手製薬企業と積極的なビジネス活動を展開して参ります。

今年の日本の夏も暑くなりそうです。
どうぞ皆様,ご自愛のほどを。

2019年5月末日

第80回(4月4日)『アメリカ癌学会(AACR)速報2』

株主の皆様へ

去る4月2日(火曜)午前10:30から「Novel Rational Checkpoint Inhibitors(新しいチェックポイント阻害剤)」というタイトルのClinical Trials Plenary Session 4で岡山大学の藤原俊義教授が,日本で実施されたテロメライシンと放射線の併用試験について報告されました。

この結果は,AACRのホームページにも大きく取り上げられました。

会場には200名ほどの聴衆が集まってきました。司会はコーネル大学放射線科教授のDr Silvia C. Formentiで,藤原教授以外にはDr Rom Leidner(Providence Cancer Center, Portland, OR),Dr Giuseppe Curigliano( Istituto Europeo di Oncologia IRCCS, Milan, Italy),Dr Alexander E. Perl(Abramson Cancer Center, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA)が新しいチェックポイント阻害剤の治療法について話されました。

藤原教授には指名発言者としてDr Geoffrey Y. Ku(Memorial Sloan Kettering Cancer Center, NY)がいくつかコメントを述べました。その内容は以下の通りでした。

  • Dr 藤原の試験は非常に良好な成績であったと言える。ただ,アメリカ人での成績に置き換えるには扁平上皮癌がメインの結果であることに注意しなければならない。
  • 米国では,手術不能食道がんには,放射線化学療法(CRT)が放射線単独よりも効果あることがRTOG試験で証明されており,米国では標準になっている。
  • そこで,RTOGグループの後を継いだ,我々NRGグループ(消化器,放射線,産婦人科のがん治療に関する最大の研究グループ)は,今回のテロメライシンの成績に大きな興味を持ち,CRTにテロメライシンを上乗せするPhase 1試験を計画中である。良い結果が得られれば,ランダム化Phase 2に進みたいと考えている。
  • 今後は,CRTに加えて,免疫チェックポイント阻害剤も併せた三剤併用の試験も検討してゆきたい。

このように,日本での成績には概ね良好な印象がもたれ,今後の開発に期待がもたれていました。

2019年4月4日

第79回(4月2日)『アメリカ癌学会(AACR)速報』

株主の皆様へ

今年もAACR(アメリカ癌学会)が3月30日からアメリカのジョージア州アトランタで開催されています。私も株主総会(3/28)の次の日,早朝からダラス経由でアトランタに飛びました。今年も世界各国からの新しいがん治療に関する報告がなされ,広大な会場が何万人の関係者で埋められ,まさに活気を帯びた学会になっています。
テロメライシン(次世代も含む)に関しては,国立がん研究センター東病院からの臨床報告も含めて7題が,テロメスキャンに関しては1題が発表されます。また,4月2日午前中に行われる学会での「新しいがん治療」に関するプレナリーセッションでは,岡山大学藤原教授より日本で行われた放射線治療との併用による臨床研究の結果(既報告済)が報告されます。

米国時間の31日に行われたのは,国立がん研究センター東病院で行われているテロメライシンと抗PD-1抗体ペムブロリズマブとの併用によるPhase 1a 臨床試験の中間報告です。この試験の目的は,テロメライシンと抗PD-1抗体が臨床で初めて併用されるため,あくまでその安全性を評価して,副次的に有効性を観察するというものです。

この試験は,進行性の固形がん患者(8例の食道がんと1例の胃がん患者)9例に対して実施されました。今回の症例はすべてがステージ4で,先に行われた放射線併用の岡山大学の試験よりもかなり重症な症例で構成されています。また現段階では各症例のPD-L1の発現度合いは確認されていません。更に組み入れ患者のフォローアップをしている状況であり,一部のエンドポイントの結果は出ていません。テロメライシンの投与は,最初の3例でまず低い投与量を,次の3例で中間投与量を,最後の3例では最大投与量を,2週間ごとに合計3回,内視鏡を使って食道がんの局所に注射し,ペムブロリズマブを3週間ごとに併用投与しました。その結果,投与を制限するような問題となる副作用(DLT)は発生せず,テロメライシンに起因すると考えられた主な副作用は軽度から中等度の発熱でした。二次評価としての予備的な有効性評価として,9例中3例で部分寛解(PR)が得られたという報告です。学会抄録では2例の反応例ということでしたが,その後の評価で1例追加され,実際の発表では3例に訂正されていました。今後,PFS (Progression-Free Survival)や免疫学的評価などが追加で解析される予定です。

今回の報告は,あくまで中間報告としての予備的な解析ではありますが,テロメライシンは抗PD-1抗体と併用した場合に臨床的に問題となるような副作用は発現しなかった点でPhase 1aとしては成功と言えるでしょう。また今回報告があった3例(33.3%)の反応例は各投与群に1例ずつ認められました。この結果は,放射線併用で行われた試験が食道局所の がん(ステージ1-3)を対象にした試験であったのとは異なり,今回の試験(ステージ4)は全身に転移した癌も含めた評価である点で単純比較はできません。

治験を担当した国立がん研究センター東病院の小島医師によると,テロメライシン投与部位における局所の反応は合計5例(55.5%)において認められたとのことで,この結果は放射線併用試験を反映するものでした。特にその中の1例では,食道を塞ぐような大きな腫瘍がテロメライシン投与後に見えなくなっており,このような局所での効果はペムブロリズマブ単独では認められないだろうということでした。これらの反応が,1年後までのフォローアップデータにどのように影響するか,今後の最終報告が楽しみです。なお,国立がん研究センター東病院では,今後テロメライシンの投与回数をさらに増やしたPhase 1b試験を開始しており,その結果も今後発表されます。

2019年4月2日

第78回(3月29日)『株主総会のご報告』

株主の皆様へ

桜花爛漫の候,皆様におかれましては益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。

さて,昨日3月28日に皇居のほとりにございます,ホテルグランドアーク半蔵門で当社第15回定時株主総会を執り行いました。ご多忙にも関わらず株主の皆様の議決権行使のご協力によって,株主総会で議案の審議に必要な定足数を充足でき,3つの決議事項を原案通り承認可決頂きました。

また,定時株主総会終了後には,例年通り,事業説明会を開催させて頂きました。
医薬品事業および検査事業について直接説明させて頂き,ご参加頂きました株主の皆様より沢山のご質問を頂戴しました。
約1時間の質疑を通じて,厳しくも温かいご意見を直接頂くことは,「未来のがん治療にパワーを!」をミッションとする当社経営陣にとって,非常に大きな活力になりました。
役職員一同を代表して,株主の皆様のご協力に御礼申し上げると共に,皆様からのご期待に真摯に報いていく所存です。

2020年3月に開催を予定しています次回定時株主総会で,株主の皆様と再びご面会できますことを心より楽しみにしております。

2019年3月29日

第77回(3月20日)『アメリカ癌学会(AACR)報告3』

株主の皆様へ

今回のアメリカ癌学会(AACR)には,テロメスキャンの膵臓がんに対する新しい臨床応用に関して,大阪警察病院の消化器外科グループ(種村匡弘医師ら)からも報告があります。

Clinical impact of viable circulating tumor cells (v-CTC) detection and PD-L1 expression on v-CTC in the patients with resectable pancreatic cancer

これまでCTCは様々な方法で液性生検(Liquid Biopsy)として応用されてきましたが,今回の報告では,テロメスキャンで検出可能な「血液中でまだ生きているがん細胞(v-CTC)」を検査することによって,非常に判断の難しい膵臓がんの予後を判定できる可能性が示されました。 この試験に組み入れられた39例の膵臓がん患者(ステージIIB/III)において,術前または放射線化学療法前にv-CTCが陽性であったのは28例(72%)でした。この28例中,肝臓転移が発生したのは16例(57%)でした。一方で,v-CTCが陰性であった11例には再発例は認められませんでした。このように,v-CTCは膵臓がん患者の予後予測に大きくかかわっていることが推察されたわけです。

また,最近注目されているチェックポイントPD-1/L1の発現に関しても非常に興味深い結果が出ています。種村医師らは,膵臓がん患者21例の組織病理標本を用いてPD-L1の発現を調査したところ,12例(57%)全てでPD-L1が弱陽性であり,その12例全例においてv-CTCでもPD-L1が陽性でした。一方で,組織病理標本でPD-L1が陰性であった9例のうち5例(56%)でv-CTCにPD-L1が発現していました。このように,膵臓がんでは組織とCTCの間でPD-L1の発現に不一致が生じていることが示唆されました。
今後,膵臓がんに対してもチェックポイント阻害剤(CP阻害剤)が応用されてゆくと思われますが,膵臓がんに関しては残念ながらPD-L1の発現が低く,CP阻害剤の投与判断基準が曖昧になる可能性がありますが,テロメスキャンによるv-CTCでPD-L1を判定することで,CP阻害剤の投与判断が可能になるかもしれません。非常に期待の持てる研究成果であると思います。

2019年3月20日

第76回(3月20日)『アメリカ癌学会(AACR)報告2』

株主の皆様へ

いよいよ都内の桜も芽吹き始め,本格的な春が到来しようとしています。そのような中,去る3月18日には当社の15周年を迎えることができ,いよいよ16年目に突入しました。これもひとえに,株主の皆様の温かいご支援,ご指導の賜物と念じております。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。
さて,前回の報告に引き続き,月末から米国アトランタで開催されますアメリカ癌学会(AACR)で報告される岡山大学からの発表の第2回目の説明をさせて頂きます。
今回は,期待される第二世代テロメライシンOBP-702(テロメライシン-p53)についても3題発表され,様々な臨床応用が検討されました。このOBP-702は,テロメライシンの遺伝子の中に,強力な癌抑制因子であるp53という遺伝子を搭載した「武装化テロメライシン(Armed Telomelysin)」として開発が始まっています。その作用はテロメライシンよりも強力であり,これまでのウイルス療法では十分な治療成績が得られなかったようながん種に対しても適応が可能と考えられます。現在,前臨床試験やGMP製造が進められています。

  1. Boosting immunity against pancreatic cancer by OBP-702 (Pfifteloxin), telomerase-specific replicative adenovirus armed with wild-type p53 gene.

    この試験は,臨床の予後が非常に悪いと言われている膵管がんに対するOBP-702(テロメライシン-p53)の効果を調べた研究報告です。OBP-702は第二世代テロメライシンとして開発されているウイルスで,テロメライシンによる抗腫瘍効果に加えて,強力な癌抑制因子であるp53を,感染したがん細胞のなかで生成させることによって,より強力な抗がん作用を示すことがこれまでに確認されています。
    今回の試験ではOBP-702は様々な膵管がん細胞の増殖に対して非常に強力な抑制効果を示し,その強さはOBP-301よりも更に強いものでした。この効果は動物実験モデルでも示され,がん組織へのCD8リンパ球の浸潤も強く認められ,OBP-702のがん免疫増強作用が認められました。今後の臨床応用が期待される報告です。

  2. Elimination of invasive pancreatic cancer cells by p53-activating oncolytic virotherapy as novel precision medicine.

    この試験も第二世代テロメライシンであるOBP-702に関するもので,よりその特性が明らかになってきました。OBP-702は膵管がん細胞の増殖をKRAS-ERKシグナルを介して強く抑制しただけではなく,膵管がん細胞の転移性の移動と組織浸潤も抑制できる可能性が示されました。動物実験モデルでも同様の効果が示され,今後の膵管がんへの臨床応用が期待されます。

  3. Elimination of MYCN-amplified neuroblastoma cells by telomerase-targeted oncolytic virotherapy as novel precision medicine.

    神経芽腫に対するOBP-702とテロメライシンの効果を検討した結果です。神経芽腫は臨床的に予後が非常に悪いがん種であることが分かっており,MYCNというがん関連遺伝子やテロメラーゼ活性が非常に高くなっていることが示されています。そこで,これらの細胞に対してOBP-702とテロメライシンの効果を検討した結果,両方のウイルス共に神経芽腫細胞に対してMYCNを抑制することによって非常に強い増殖抑制作用を示しました。この結果は,テロメライシンやOBP-702の脳外科領域への応用を支持する結果になりました。また新しい適応が期待されます。

2019年3月20日

第75回(3月13日)『アメリカ癌学会(AACR)報告1』

株主の皆様へ

来る3月29日からアメリカ合衆国ジョージア州アトランタで始まるアメリカ癌学会(AACR)で,今年も岡山大学からテロメライシン関連の基礎的な報告が6題発表されます。そのうち,今回はテロメライシンに関する3題について,簡単にご説明したいと思います。いずれも,これから新しい臨床応用を示唆する内容で,大変興味深い内容になっています。
残る3題は第2世代テロメライシンであるOBP-702(テロメライシン-p53)に関するもので,次回にご説明差し上げようと思います。

  1. Boosting replication and penetration of telomerase-specific replicative virus by paclitaxel induces synthetic lethality in peritoneal metastasis of gastric cancer.

    胃がんの腹腔内播種(転移)は非常に重篤であり予後が悪いと言われています。これに対して近年,抗癌剤パクリタキセルの腹腔内投与を行った臨床試験で比較的よい成績が報告されていますが,依然として十分な臨床成績とは言い難い状況です。そこで,ヒト胃がん腹膜播種モデルマウスを使って,テロメライシン(実際はテロメスキャンを使用)とパクリタキセルを併用して腹腔内投与をしました。その結果,テロメライシンとパクリタキセルの併用投与は各々の単独投与よりも高い相乗効果を示しました。興味深いことに,パクリタキセルはテロメライシンの増殖能力を増強したばかりではなく,テロメライシンの転移癌への浸透を増強していることも明らかとなりました。これは今まで明らかになっていなかった新しい知見です。今後の臨床応用への期待が膨らみます。

  2. Oncolytic immunotherapy with PD-1 blockade and telomerase-specific oncolytic adenovirus in osteosarcoma.

    これは骨肉腫モデルに対して,PD-1抗体と併用して大きな効果を発揮したという報告です。 骨肉腫は非常に悪性度が高いがんで,子供や成人の骨や筋肉に発症するがんです。最近PD-1抗体が色々ながんに対して非常に高い効果を示していますが,骨肉腫に対してはあまり良い効果が得られていないのが現状です。この結果も,今後のテロメライシンとPD-1抗体併用での臨床応用を示唆するもので,大変興味深い結果です。

  3. Involvement of extracellular vesicles in the abscopal effect induced by oncolytic adenovirotherapy.

    この試験は,テロメライシンを注射した部位以外のがんにも効果がある(アブスコパル効果)のは何故かという問いに対して行った実験です。テロメライシンが癌細胞を破壊した時に出てくる細胞外小胞(EV)というものが,離れた部位にあるがん組織にも見つかったというもので,このEVが離れたところにある癌細胞の破壊に関係があるのではないかと考察しています。これまでにない新しい知見です。

2019年3月13日

第74回(3月6日)『株主総会の議決権行使お願い』

株主の皆様へ

三寒四温が続く毎日ですが,皆様におかれましては益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。

さて,本日,来る3月28日に例年通り,皇居のほとりにございます,ホテルグランドアーク半蔵門で執り行われます当社第15回定時株主総会の招集通知を発送させて頂きました。役職員一同,株主の皆様のご来場をお待ち申し上げております。

今回の株主総会の議題は,発送させて頂きました案内にございますように,決議事項として以下の通り3つございます。

  1. 取締役4名の選任です。従来は6名の取締役体制でしたが,より機動的で効率的な意思決定のために,スリムな取締役構成へ変更したいと思います。創業者でもあり私は続投をして,オンコリスの企業価値をさらに大きくしてゆきたいと考えています。社外取締役である浦野氏には,これまで取締役会においても積極的なご発言を頂いており,今回も継続してその任に当たって頂きたいと考えています。
  2. 当社定款の一部を変更し,発行可能株式総数を拡大したいと考えています。この定款変更は,単純な財務資金調達だけではなく,当社のビジネス活動における様々な選択肢を増やすことも目的の1つにしています。
  3. 常勤取締役への「譲渡制限付株式」の導入に関する議案です。2月12日のコラムでも申し上げました通り,議決権行使が可能な株式を役職員が直接保有することで,よい意味での経営への牽制が産みだされ,経営をより律することに繋がると考えています。

つきましては,株主の皆様にお願いがございます。前回の株主総会での議決権行使割合は40%弱でした。株主総会で議案の審議を行うには,33.4%以上の株主の方に「株主総会の会場にご来場頂く」または「議決権行使書を株主総会前日までにご返送頂く」の何らかを行って頂く必要がございます。当日ご来場いただけない株主様は,近日中にお手許に届きます株主総会招集通知に同封の議決権行使書をご返送頂きたく存じます。日々ご多忙とは存じますが,何卒,くれぐれも宜しくお願い申し上げます。

なお,株主総会終了後には短い休憩を挟みまして,例年通り,事業説明会を開催させて頂きます。弊社の医薬事業および検査事業に関しまして経営陣から直接説明させて頂きます。説明の後にはご参加頂きました皆様よりご質問を頂く機会も設けさせていただいております。厳しくも温かいご意見を直接頂くことは,「未来のがん治療にパワーを!」をミッションとする当社経営陣にとって,非常に大きな活力になります。来る3月28日に株主の皆様とご面会できますことを心より楽しみにしております。

2019年3月6日

第73回(2月12日)『株主の皆様へ』

弊社はこの度「譲渡制限付株式」を導入し,取締役,執行役員ならびに社員に対して付与することになりました。この株式の特徴は,ある一定期間(2年から5年)の間には売却できず,またその期間は弊社に勤続していることが条件となるものです。

弊社は現在,役職員一丸となり,テロメライシンを始めとするパイプラインの価値を最大化すべく努力しております。しかしながら,昨今の人手不足と製薬・バイオ業界の人材流動性の低さから,すぐれた人材の確保が非常に難しい状況にあります。 そのため今後このような譲渡制限付の株式を役職員に付与することにより,株価上昇ならびに企業価値向上への貢献意欲を従来以上に,かつ継続的に高めることができると考え,また役職員の定着率も高めようと考えました。弊社が保有する様々なノウハウやネットワークを次世代リーダーへしっかりと伝承し,新たな世代が更なる発展を産むことに本制度が貢献することを期待しています。

また,ストックオプションと異なり,議決権行使が可能な株式を役職員が直接保有することは,よい意味での経営への牽制が産みだされ,経営を律することに繋がるとも考えています。これはボトムアップ型のコーポレートガバナンスの向上にもつながると考えています。

今回の「譲渡制限付株式」発行に伴い,最大で1.5%弱の希薄化が生じることになりますが,今後の企業価値向上につながり株主様各位のご期待に報いるための施策と考え,本制度を導入しましたことを,どうかご理解いただきますよう,お願い申し上げます。

寒さ厳しき折,どうぞ皆様もご自愛くださいますよう。

2019年2月12日

第72回(2月8日)『決算発表』

株主の皆様

本日,弊社2018年度の決算発表を行いました。売上高168百万円,経常損失1,230百万円,当期純損失は1,233百万円でした。売上高が予想より62百万円低下した理由は,米国Cornell大学とのテロメライシン臨床試験契約が相手方都合により年度を越えてしまい,それに伴うMedigen社(台湾)からの開発協力金収入の遅れが生じたことや,テロメスキャンに関する収入が未達成であったことが主な要因となっています。

当社が手掛けている腫瘍溶解ウイルス テロメライシンによる「がんウイルス療法」は,昨今の癌と免疫の関係解明の結果から,学会などでは「腫瘍溶解ウイルス免疫治療(Oncolytic Immuno Virotherapy)」などと言われるようになってきました。これはまさにウイルス療法がチェックポイント(PD-1/L1)阻害剤などの癌免疫療法との相性が良いのではないかと,世界の研究者が考えていることなのでしょう。

さて,テロメライシンの開発はいよいよ次のステージに持ち上がろうとしています。まず,国内で実施されている食道癌放射線併用Phase 1は最終段階を迎え,すでにPhase 2の試験計画に関してPMDAとの折衝を終え,研究会組織を立ち上げて治験申請の準備を万端整えます。韓国と台湾で実施している肝臓がんPhase 1も最終症例の組み入れを待っています。アメリカで実施しているメラノーマPhase 2については,現状この領域での臨床試験が非常に数多く集中しており,今後方針を再検討 するべき時期に来ているようです。

更に最近になり,乳がん,頭頸部がん,咽喉がん,肺がん,骨肉腫,尿管がんなど,多岐にわたるがん種に対してテロメライシンで臨床試験を実施したいという国内外からの申し出があり,弊社としては嬉しい悲鳴が上がっています。やはり,よきパートナーと組むことによって,テロメライシンの効能効果を確認してマーケットを広げて行くことが重要であることは言うまでもありません。

大きな製薬企業とタッグを組むということは,それまでにそれ相応の時間と努力が必要なことはご理解いただきたいと思います。弊社は全力をあげてよきパートナーを見つけ,テロメライシンを中心とするパイプラインの開発とライセンスを進め,オンコリスの価値を大きくしてゆきたいと考えています。 これからも弊社へのご理解とご支援を,どうぞよろしくお願い申し上げます。

2019年2月8日

第70回(1月7日)『2019年 年頭所感』

皆さま,明けましておめでとうございます。
亥年であり猪突猛進の年になりそうではありますが,年明け早々の円高と日経平均下落でマーケットが始まりました。
バイオ業界では,新年早々に大きなニュースが飛び込んできました。 アメリカ大手製薬企業BMS(ブリストル・マイヤーズ スクイブ製薬)が約8兆円をつぎ込んで,がん治療薬企業セルジーン(Celgene,USA)を買収したという話が飛び込んできました。
これは昨年の武田薬品のシャイアー買収額よりも更に大きなM&Aとなり,アメリカ大手製薬企業ですらもう新薬のネタがなくなってきたという危機感の表れではないかと思います。

一方で,昨年末には中国から驚きのニュースが飛び込んできました。
まず,アメリカのバイオ企業Fibrogen社がAstrazenecaと共同開発していた貧血治療薬が,なんとアメリカよりも中国で先に承認されたというニュースです。
これまでの中国の医薬品政策では,欧米で承認されたものを優先的に承認するというものでしたが,いよいよ中国も欧米レベルで新薬承認体制を取ってきたということを意味しています。確かに中国ではすでにオプジーボやキイトルーダ以外にもすでに複数の中国産チェックポイント阻害剤が承認されています。
更に,立て続けに上海工業投資ファンドが国家主体で設立され,約8000億円が拠出されたというものです。これはバイオだけのファンドではありませんが,中国は本気で世界の新技術や創薬事業に挑みかけている証拠ではないでしょうか。

12月31日の日経新聞の1面に「先端技術研究 中国が先行」という記事がありました。30項目の注目されている新技術テーマのうち,医療バイオ系が7つ,そのうち5つのテーマ(Zika,ゲノム編集,免疫療法,腸内細菌,細胞間シグナル伝達)についてはまだアメリカが世界第一位ですが,中国は2位から5位のポジションを取っていて,免疫療法以外は全て日本より上という判定です。
残りの2つのテーマ(核酸医薬,光熱療法)については中国が世界第一位なのです。
日本はいずれもその後塵を拝しています。日本はアメリカと並ぶ新技術研究大国だと思っている人は多いと思いますが,実はもう我々の横を中国が静かに抜き去っているようです。10年後には中国人がノーベル医学生理学賞などを総なめということもあり得るように思えます。

このような状況の中で2019年が始まりました。
当社はウイルス療法薬テロメライシンの開発を更に1段階前進させ,「がんを切らずに治す」新しい治療薬として国内外での治験を進め製造承認申請を目指すと共に,ライセンス活動を強化してゆきます。また,血中循環がん細胞(CTC)検出薬テロメスキャンも,がんの高感度検出を目指し,承認申請に向けて臨床試験を進めてゆきたいと思います。

インフルエンザが流行しています。どうぞ皆さまもご自愛くださいませ。

2019年1月7日

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