社長コラム
社長コラム 2023
- 第121回(3月23日)『AACRでの発表内容について』
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株主の皆様
昨日報告させていただきました国立がん研究センター東病院で実施されたテロメライシンとペムブロリズマブ併用による医師主導によるPhase 1 臨床試験結果のAACR発表に関する内容について,私見を述べさせていただきます。
まず,本試験は医師主導治験であり,また治験薬であるペムブロリズマブは,MSD社から無償にて提供されているため,国立がん研究センター東病院・MSD・オンコリスの3者の関係の中で運営されてきました。したがって,当社は治験責任医師や担当医師からの情報以上の内容は事前に感知できない状況にあったことをご認識していただきたいと思います。
このような状況のなかで,今回の臨床試験はPhase 1 として,パートA(11例)とパートB(11例)に分かれて実施されてきました。試験目的は,各種固形がんに対して,テロメライシンの有効性よりもペムブロリズマブ併用する場合の安全性評価に重点が置かれていました。
その結果,合計22例の進行した固形がん患者が組み入れられ,そのうち食道がんは合計19例ありました。今回のプレス内容にありますように,全身評価(RECIST)による部分奏功例(PR)は22例中2例(9.1%)でした。
この結果は,非常に微妙な結果であったと考えています。今回の臨床試験はPhase 1であり,治療目的よりも安全性評価が主体となっています。そのため,安全性については,主たる副作用(中等度以上)としては発熱と肝機能異常がそれぞれ4.5%であり,重篤な副作用は認められなかったことから,本来の目的は達成されたと考えています。一方で,対象症例は,過去に3回以上の治療を受けても奏功せず,他の取るべき治療法がないような,非常に重症の症例がほとんどであったことから,高いレスポンスが得られなかったと思われます。同様の免疫チェックポイント阻害剤であるニボルマブのサードライン以降の臨床試験では奏効率が12%という報告があり,今回の結果はそれを上回るような結果ではなかったと考えられます。
今後,進行した食道がんに対しては,免疫チェックポイント阻害剤に化学療法を併用するレジュメが次第に主流になってきます。今後,この対象で治験をどのように進めるかは,アメリカでの胃がんの臨床試験の結果を含めて検討してゆきたいと考えています。
2023年3月23日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生
- 第120回(1月6日)『2023年 新年のご挨拶』
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株主の皆様
2023年,明けましておめでとうございます。
今年は新年早々からダッシュしてゆきたいと思います。ご存知のように,昨年末までにテロメライシンの食道がんPhase 2 は目標症例に到達したので,これから全症例の内視鏡判定を委員会の医師によって最終化し,全症例の予後調査行います。この試験の結果を出来る限り早く皆様にお伝えできるよう,研究会組織の担当医師と連携して臨床データの質を高めてゆきたいと思います。また,テロメライシンの製法開発も佳境に入り,今年度中に商用製法と規格試験のバリデーションを完了させ,新旧製造品の同等性を確認してゆきます。そのために,ウイルス製造を行っているベルギーのHenogen社に社員を随時派遣して進捗管理を行い,年内には承認申請に足る情報を充足させます。さらに,当社神戸リサーチラボでも様々な承認申請に関わるデータを出してゆきます。
テロメライシンの2024年承認申請に向けて,課題はまだ数多く残っています。まず,当社での製造販売体制の構築です。現在,経験者の採用を急いでいます。次に販売体制ですが,外資も含めた製薬会社との販売提携契約締結を急いでいます。PMDAとの相談も回数を増やして,相互の意思疎通を円滑にしてゆきたいと思います。
一方,オンコリスUSAでは,テロメライシンの胃がんに対する次ステップの医師主導治験開始に向け,免疫チェックポイント阻害剤を有する製薬会社との共同開発契約締結を完了させてゆきます。
昨年は,テロメライシンの臨床試験や製造に関する中外製薬からの引継ぎで多くの時間を要してしまい,皆様に多くの成果を報告できませんでしたが,今年はテロメライシンの成果を数多く報告してゆきたいと思います。
また,年内にはOBP-601(censavudine)のPSP(進行性核上性麻痺)に対するPhase 2a の結果もTransposon社から報告される予定です。今年も社員一同,益々事業発展に努めてまいります。
皆さまのご多幸をお祈り申し上げます。2023年1月6日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生