社長コラム

社長コラム 2021

第98回(2月25日)『株主の皆様へ』

新型コロナ感染による緊急事態宣言もあと2週間というところで,関西地区や中部地区から早めの解除が始まりそうです。都内ももう一息のところまで来ています。もう少しの間頑張りましょう。

さて,昨年のパイプラインの進捗の中で,OBP-702の状況についてお話いたします。OBP-702は当社ではテロメライシン(suratadenoturev)に次ぐ第2世代の腫瘍溶解ウイルスとして設計されています。従来のテロメライシンの腫瘍溶解作用に加え,私たちの体の細胞にもある「がん抑制遺伝子」の中で最も強いと言われている「p53」という遺伝子を導入し,テロメライシンよりも強力な殺細胞効果とがん免疫誘導を実現させようというウイルスです。OBP-702は,がんのウイルス療法に遺伝子治療をハイブリッドさせたウイルスです。

現在,岡山大学でその作用を解析しており,テロメライシンよりも10-30倍強力な作用を示すことが示唆され,膵臓がんやサルコーマ(肉腫)に対して有効性が示されつつあります。一方で,GMP製造にはいろいろ苦労しています。テロメライシンもOBP-702も同じアデノウイルスですが,抗腫瘍効果はそれぞれ異なるため,製造条件やプロセスに微妙な差が出てきており,プロセス構築に時間をかけています。探索的な毒性試験や生体内分布試験はすでに終了していますが,年内には本格的な毒性試験を完了させ,2022年度中の治験申請に向かいたいと考えています。

OBP-601(Censavudine)は昨年6月に米国のトランスポゾン社にライセンスし,これまでの考えとは異なったメカニズムにより,神経難病(ALSなど)をターゲットとして開発チームが組成されています。さらにトランスポゾン社は十分な資金調達も終え,FDAとのPre-IND会議も行われ,順調なスタートが切られたようです。今年中に神経難病を対象として臨床試験が開始される予定だと聞かされています。

1か月後に株主総会を行います。新型コロナの拡大はまだ十分に収まってはいない状況で,皆様のご来場は出来る限りご遠慮いただき,極力書面またはインターネットによる事前の議決権行使をお願い致します。

三寒四温の季節柄,株主の皆様におかれましてはくれぐれもご自愛ください。

2021年2月25日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第97回(2月19日)『株主の皆様へ』

前回はテロメライシンに関する2020年度の達成に関して報告差し上げました。その後,WHOからテロメライシンの国際一般名称が正式に決定され「suratadenoturev」という日本人には読みにくい名前になりました。今後はこの名前が正式なテロメライシンの呼び名となり,学会や論文などではテロメライシンという商標は使われなくなります。

さて,今回は新型コロナウイルス治療薬プロジェクトに関してお話します。2020年6月に鹿児島大学から本件に関する特許を譲渡され,これまで化合物の最適化を行ってきました。昨年にはOBP-2001という化合物を選択し,注射剤として開発し,先行品であるレムデシビル(ギリアド社)との併用効果を期待するという発表をしました。しかしその後,さらに活性の強い化合物が複数合成されてきました。これらの化合物に関して,探索的な毒性試験や経口吸収性などを検討した結果,OBP-2011という化合物が見いだされました。1日1~2回の経口投与で強い抗ウイルス効果を示す可能性があることが示唆されています。

新型コロナ感染症は,新しいメカニズムのワクチンが複数緊急承認され,先行きに光が差してきたように思えます。しかしながら,すでに「イギリス型」や「南アフリカ型」などの突然変異ウイルスが世界各地で分離され,それらは既存のワクチンでは完全には克服できない可能性があると考えられています。また,日本人はワクチンに対する抵抗感が強く,集団免疫が獲得されるには高いハードルがありそうです。おそらく,来年以降も世界各地で新型コロナウイルスSARS CoV-2のクラスターが発生することになるのではないかと考えています。

この世界的な状況を鑑みて,当社の新型コロナウイルス治療薬を「軽症から中等症」のコロナ感染症患者に適応させ,できれば「無症状のPCR陽性患者」に対しても投与可能することで,コロナウイルスの感染の根元を叩けるのではないかと考えています。すでに,ギリアド社ではレムデシビルを吸入剤として開発されており,それ以外にもMSDやRocheなどが経口投与の治療薬開発を開始しています。しかし,当社のOBP-2011をはじめとする後継化合物は,それらの化合物とはメカニズムが異なると考えており,将来は併用投与も可能になると期待しています。

臨床試験での効果確認は2022年になりますが,まだまだマーケットのチャンスはあり,再びマスクをしなくても楽しく会合ができる世の中が来るよう,最善の努力を続けてゆきたいと考えています。

次回はOBP-702やOBP-601のお話をします。

2021年2月19日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第96回(2月17日)『株主の皆様へ』

2020年度の決算が固まり,先週発表させて頂きました。昨年度はOBP-601の米国トランスポゾン社への導出が決まり,テロメライシンの食道がんに対するオーファンドラッグ指定が成され,また新型コロナ治療薬に関する特許を鹿児島大学から譲渡してもらうなどの達成があり,売上高314百万円,経常損失は1,723百万円となりました。また研究開発費等は1,050百万円となりました。詳細は2月12日に発表しました『2020年12月期 決算短信』をご覧ください。

さて,研究開発の進捗に関してご報告させていただきます。内容が多いので,これから数回に分けて報告させていただきます。

まず,テロメライシンですが,現在国内4本,米国4本,合計8本の臨床試験が実施されています。残念ながら,やはり新型コロナウイルスの影響で,2020年は全ての臨床試験において遅れが認められました。当社が米国で進めています胃がんPhase2試験ですが,目標18例中昨年12月までに9例の投与が行われ,その中間報告がありました。すべてステージ4の重症の胃がん・胃食道接合部がん患者が組み入れられ,ペムブロリズマブが併用されました。このうち1例がPR,1例がSDとなっています。PRの症例については現在も存命であり,またテロメライシンを投与した局所のがんについても縮小が認められています。担当であるコーネル大学シャー医師は,ある程度の手ごたえがあると判断し,今後も症例の組み入れを続けると発言しました。また,米国ではテロメライシンの食道がん治療がオーファン指定を受けていることもあり,今後は,食道がんに対するコホートを設けて進めて行く予定です。

更に米国では,放射線化学療法併用による食道がんPhase1試験と,放射線療法+ペムブロリズマブ併用による頭頸部がんPhase2試験が計画され,すでに治験開始準備が整っています。

また,台湾・韓国で進められてきた肝臓がんPhase1試験については,昨年最終報告がまとめられ,学会で発表を計画しています。テロメライシンの肝臓がん組織への直接注射が,合計20例に行われ,主な副作用は中等度以上のかぜ様症状が6例に認められました。局所へのレスポンスは3例に認められ,最大25%の腫瘍組織縮小が認められました。このデータをもとに,中外製薬では日本国内においてアテゾリズマブ+ベバシズマブ併用の肝臓がんPhase1試験をすでに開始しています。

国立がん研究センター東病院と岡山大学で実施されている食道がんを中心としたペムブロリズマブ併用によるPhase1試験(EPOC-015)は,やはり症例組み入れが滞り,目標13例中10例の組み入れで留まっています。しかし,テロメライシンの食道がん局所への効果は明らかであり,残り3例の組み入れを急いでいます。

これらの試験以外に日本国内の開発進捗に関しては中外製薬様が主導しており,放射線療法併用の食道がんPhase2試験は2023年以降の承認申請を目指して進められており,更に上記の肝臓がんPhase1試験以外にも,化学放射線療法を併用した食道がんPhase1試験やアテゾリズマブ+化学放射線療法併用による頭頸部がんPhase1試験が計画されています。

次回は新規コロナ治療薬に関して報告いたします。

2021年2月17日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第95回(1月18日)『株主の皆様へ』

第一三共が口唇ヘルペスの原因となるウイルスを遺伝子改変して,日本で初めての腫瘍溶解ウイルスG47Δ(DS-1647)の脳腫瘍に対する承認申請を発表しました。承認されれば,日本初のがんのウイルス療法の実用化になります。ターゲットにしているがん種や,ベースにしたウイルスは,当社のテロメライシンと異なりますが,同じがんのウイルス療法を開拓する仲間として,応援しています。

さて,先日資金調達の趣旨を報告させていただきましたが,当社は2020年12月に資金調達の発表と同時に,愛知県瀬戸市にある朝日インテック株式会社と資本・業務提携を行いました。朝日インテック社は心臓カテーテルやそのガイドワイヤーを開発・製造・販売してきた東証1部上場企業で,近年大きく成長を遂げてきた会社です。

 

当社は,皆様もご存知のように,アデノウイルスを遺伝子改変したがんのウイルス療法「テロメライシン」を食道がんに応用してきましたが,その際,現場担当の医師から「テロメライシン」を注射する際にいくつもの課題があると言われていました。

まず,1つの腫瘍の色々な場所に注射したくてもアングルを変えられず,注射したい場所に打てない可能性があります。次に,注射部位1か所あたり一定量以上を,複数個所に注射するという,やや難しいテクニックが必要とされます。更に,既存のカテーテルを使った時には注射が終わった後でも,貴重な「テロメライシン」がカテーテルの管の中に残り,それが使われずに廃棄されてしまいます。

我々はこのような医療現場の課題を解決するために,あしかけ5年の間このようなデバイス開発のパートナーを探してきましたが,到達の難しい患部へのアクセスを可能とするガイドワイヤー・カテーテル技術を持つ朝日インテック社と出会うことができ,これらの課題を解決できる糸口が見つかってきました。

これは,将来商品化された「テロメライシン」の現場での利便性が高くなるだけではなく,第二世代のOBP-702にも応用が可能ではないかと考えています。

当社はアデノウイルスによるがんのウイルス療法を世界で先導し,より良い医療を皆様のもとに届けられるよう,朝日インテック社と共に開発を推進してゆきたいと考えています。

2021年1月18日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第94回(1月4日)『株主の皆様へ』

新年明けましておめでとうございます。世界のコロナ感染は依然治まることなく,再びの緊急事態宣言が検討される中で2021年を迎えることになりました。英国や南アフリカでは新たな変異ウイルスが拡散するなど,増々状況が混沌として参りました。この1年がどのような世界になるのか,だれも予想つかない状況です。

さて,昨年12月10日の増資発表を行って以来,皆様への情報発信が出来なかったことにつきまして,まずお詫び申し上げなければなりません。
皆様既にご存知のことと思いますが,1億円以上の増資を行う場合には「企業内容等の開示に関する内閣府令」の規定に基づき,関東財務局に有価証券届出書を提出する義務があり,そこに記載した内容以外の情報発信により市場に影響を与える可能性が懸念されたため,当社弁護士からのアドバイスに基づいて,第三者割当増資の払込み完了まで私からのコラムなどの発信が叶いませんでした。このような状況をどうぞご理解いただきたく存じます。

今回の増資には以下のような状況が発生したために,数多の検討を行ったうえでやむを得ず実行に至りました。
 1.テロメライシンのGMP製造および品質試験バリデーションに対する追加の資金
 2.OBP-702の前臨床試験およびGMP製造を加速推進するための資金
 3.OBP-2001およびその後継化合物の前臨床試験とGMP製造を加速推進するための資金

まずテロメライシンですが,日本国内では中外製薬が食道がんPhase2臨床試験を進行しています。一方アメリカでは,当社が実施している医師主導治験は残念ながら大幅に遅れています。これはあくまで臨床現場のひっ迫した状況によるものであり,テロメライシン自体の問題によるものではないと認識しています。しかしながら,中外製薬としては2022年以降の日本国内の承認申請に向けて,着々と作業は続けられています。なかでも商業用ウイルス製剤に向けた製法開発には想定以上の資金がかかることが判明し,ウイルス製法開発に対する当社の負担が大きく増加することになりました。

OBP-702については,現在前臨床試験と治験薬のGMP製造が進行しており,2022年初頭の治験申請(IND)を目論んでおり,遅滞なく計画を遂行してゆきたいと考えています。その後に行われる臨床試験は現段階でチェックポイント阻害剤との併用を初期の段階から実施する予定であり,この治験にも然るべき資金が必要となってきます。

OBP-2001およびその後継化合物については,今年上半期にはひとつの化合物に絞り込んで,開発をフルスピードで行ってゆくつもりです。すでにOBP-2001の活性を大きく上回る化合物が見出されており,それらの化合物が経口投与でも効果が出ると判断された場合には,直ちに化合物を切り替えて開発して行く予定です。既に欧米では何種類ものコロナワクチンが緊急承認され,医療従事者やハイリスクな人たちに投与が開始されています。それでもなお,世界がこのコロナ禍から解放されるにはまだ何年もかかると言われています。当社の化合物が,インフルエンザの治療薬と同じように,近所のクリニックでも処方できる世の中が来なければ,世界はコロナ前の世界に容易には戻れないと考えています。

2021年がすでに始まり,世界は様々なやり方でこのコロナ禍と戦っています。当社も様々な問題を抱えながらも,今年は大きな成果が出せるよう,役職員一同最善の努力を払ってゆくつもりです。どうぞ皆様,本年もご指導のほど,よろしくお願い申し上げます。

2021年1月4日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

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