社長コラム

社長コラム 2022

第119回(10月17日)『オンコリスの現状 -新たな歩み-』

株主の皆様

 先週末10月15日を持ちまして,中外製薬とのテロメライシンのライセンス契約が正式に終了いたしましたことをお知らせいたします。昨年10月の契約解消通告以来,数多くの前臨床ならびに臨床試験に関する手続きや資料を引き継ぎ,またこの間も商用のGMP製造開発に関わる経費の約50%の負担金を受け取ってきました。いよいよこれからは独立独歩でテロメライシンの開発に邁進できる状況が整いました。

 この1年の間に,社内体制を「研究開発型」から「製造販売型」も並行して実施できるように調整してきました。これまで手薄であった薬事機能については,元PMDA審査官を採用することが出来たため,今後はPMDA/厚生労働省との連携をより充実させることが出来ると期待しています。また,GMP製造に向けたスタッフについても,承認申請の経験者が採用出来たために,より詳細な規格・品質のチェックが出来るようになりました。これらの状況が整ったことにより,先駆け審査制度を利用した承認申請資料の作成に既に入っており,PMDAとの事前相談なども開始しています。

 肝心の放射線併用Phase 2 臨床試験ですが,これまで国内17施設で実施してきましたが,目標症例到達まであと1例というところまで来ています。この状況で進めば,目標とする2024年の承認申請は変更することなく達成できると考えています。ただし,テロメライシンの効果に関しては,私たちには最後まで分からないような臨床試験体制をとっています。有効性に関しては現時点で何とも申し上げられない点を, 何卒ご理解頂きたいと存じます。

 最後にビジネス活動ですが,テロメライシンの販売に関してはやはり製薬企業の力を借りる必要があると考えています。出来れば販売だけではなく今後適応追加に関わる臨床試験も実施可能な,複数の国内外の製薬企業との交渉に入っています。

 まだテロメライシンの承認申請までには数々の課題を抱えていますが,ひとつずつこれらを克服して目標を達成し,承認申請に向けて邁進してゆきたいと思います。先般の日本食道学会においても,高齢者の食道がん患者に対する治療法は確立されてはおらず,多くの議論がなされていました。当社はテロメライシンを上市させることで,治療法の選択肢がない食道がん患者に新しい希望の光を届けてゆきたいと考えています。

2022年10月17日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第118回(6月17日)『OBP-2011のAMED助成金への応募結果について』

株主の皆様

 本日,AMEDよりOBP-2011の「令和4年度新興・再興感染症に対する革新的医薬品開発推進研究事業に係る公募(3次公募)」について,不採択との通知を受けました。大変残念ではありますが,その理由は,in vitroでのSARS-CoV2抑制活性は既存薬に匹敵するが,ハムスター感染実験での効果は限定的であり,安全性とのマージンが狭いため,ヒト用量換算を適切に出来ないのではないか,というものでした。

 このように判断されるのは仕方ない点もあり,我々も主要な課題として挙げていました。しかし,ハムスターの感染モデルがヒトでのコロナウイルス感染をどのくらい反映しているのかはまだ学会でも賛否両論あり,安全性がある程度確保できるようであれば,実際にPhase 1 臨床試験でヒトでの血中濃度などを検討して臨床用量を設定してゆけるのではないかと考えていました。

 ご存知のように,日本国内ではコロナ感染者が漸減しており,医療現場の逼迫状況も改善されています。一方で,ヨーロッパ諸国ではまだ毎日数万人の感染者が報告され,感染力の高いオミクロン株BA.5が出現しているようです。このような状況で,欧米の大手製薬企業は,コロナ治療薬はもう十分と考えているのではなく,新しいメカニズムの治療薬を開発する意欲はまだ削がれていないと考えています。

 今回の結果に伴い,当社ではOBP-2011の開発方針に関して変更をせざるを得ないと考えています。現在,鹿児島大学と国立感染症研究所で進めているOBP-2011の詳細なメカニズム解明は継続して進めてゆき,また,コロナ感染症モデルでの最適な投与量や投与方法も検討を続けたいと思います。一方で,正式な機関決定後にあらためて報告させて頂きますが,今後はOBP-2011の優先度を下げて臨床試験開始時期を遅らせる予定です。その分,テロメライシンの開発や承認申請に向けて,会社のリソースを集中させてゆきたいと考えています。

2022年6月17日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第117回(6月1日)『テロメライシンの承認申請に向けて』

株主の皆様

 ご無沙汰してしまいました。株主総会以降,テロメライシンの中外製薬からの諸々の引継に忙殺されていましたことをご容赦ください。

 会社の状況を簡単に説明させていただきます。現在,独力でテロメライシンを承認申請まで持ち込むため,これまで研究開発中心であった社内体制を,「医薬品製造販売」が出来るような体制に向けて大きく改変させています。特に薬事面での体制を充実させるべく,大きく舵を切っています。

 更に,テロメライシンの商用製造に関しては,ベルギーにあるヘノジェン社への技術移転を行うと同時に,弊社神戸リサーチラボでのプロセス開発が進んでおり,品質試験法の開発も含めて,来年の商用製造に向けて1歩ずつ前進しています。

 臨床試験においては,中外製薬主導で実施してきた食道がんPhase 2 は,すでに大半の症例組み入れが終わっています。臨床試験担当医師間での情報交換会も活発に行われており,年内の組み入れ完了も見えてきたようです。現在行っている中外製薬からの引継ぎは以下のようなものです。
1.臨床試験施設に関する様々な承継手続き
2.臨床試験データベースの受け入れに関するシステム立ち上げ
3.先駆け申請の変更手続き
4.治験届の変更手続き
5.治験実施体制における重要な医師との引継ぎ

 これらの作業はすべて2024年の承認申請に向けて進めています。それでもいくつもの課題があり,ベルギーでのウイルス製造を遅滞なく進め,申請資料を早期にまとめるためにも新たな人材を募集する必要が出てきています。日本国内では第一三共の「デリタクト」(ヘルペスウイルス製剤)以外にウイルス療法の承認例はなく,経験者をリクルートすることは容易ではありません。

 また,今後は,日本国内でのテロメライシン販売に向けてのパートナーが必要と考えており,ビジネス面でも積極的な活動を展開してゆきたいと考えています。

 このように,医薬品の承認申請から製造販売に関しては,オンコリスとして初めての経験でありますが,よきパートナーを得ることによって,製薬企業として独り立ちしてゆけるよう最善を尽くしてゆきたいと考えています。今後も皆様のご支援を賜りますよう,宜しくお願い申し上げます。

2022年6月1日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

第116回(1月6日)『2022年 新年のご挨拶』

株主の皆様

 明けましておめでとうございます。 昨年は当社にとって非常に厳しい1年となりました。予期しなかった中外製薬からの契約解消につきましてはとても残念であり,皆様には大変なご心配をおかけすることになりました。

 昨年末には中外製薬とTermination Agreementを締結しました。今年10月までの正式契約解消に向けて現在,会社を挙げて中外製薬からの臨床試験の引継ぎを中心に,各種手続きを開始しています。それに伴い,臨床開発や製造関係のスタッフを増強し,2024年度の承認申請に向けて全力投球してゆきたいと思います。

 同時に,世界に向けたテロメライシンのライセンス活動も再開しています。昨年までは,残されていた中国地域のライセンスに関して,中外製薬を第一候補として活動してきました。中外製薬との契約解消を受け,現在,新たな製薬企業に対し,日本での「先駆け審査指定」やアメリカでの「オーファンドラッグ指定」をテコにアプローチしています。早期のライセンスに繋げてゆきたいと思います。

 新型コロナ治療薬OBP-2011については,前臨床試験が順次進行しています。新しいメカニズムでウイルスの増殖を抑制する点が評価され,欧米の大手製薬企業とライセンスに関する話し合いを続けています。

 今年は,昨年のマイナスを取り戻すだけではなく,世界でも例のない「ウイルス創薬企業」として,より成長できるよう,昨年にも増して研究開発とビジネス活動に専念するとともに,社員の研修も強化して皆様のご期待に沿えるよう活動してゆきます。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

2022年1月6日
オンコリスバイオファーマ株式会社
代表取締役社長 浦田泰生

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